2001.8.15~18 ソロ


 登山をするものにとって,北アルプスの奥穂高岳から西穂高岳へのルートは一度は歩きたいコースではなかろうか。たくまろもぜひ若い?体力のあるうちにとの思いが通じたか,やっと思いが叶えられる日がやってきた。


 8月15日
10:20京都を出発,琵琶湖湖周道路から米原へ,関ヶ原で高速に乗る。中津川からR19を北進して,17:00乗鞍高原観光センター前駐車場へ到着。断続的に降雨がある中,隣接の天然温泉「湯けむり館」へ入湯,露天風呂から残雪の乗鞍がガスの切れ間に浮かぶ。休憩ホールで地ビール「穂高・・・」を飲んだが快く火照った体にこの黒ビールは,小癪にもフルーティな芳香を鼻空内に放ち,舌の両側が発泡により微妙に刺激される。しかし,後味がすっきりしていてしかも余韻さえ心地よい。久々の絶品だ。また乗鞍が好きになりそうだ。
しかし,駐車場では多くのキャンパーがテントを張っており,案内所前は塵の山となっている。まるで無法地帯だ。私も決してマナーがよいとは思っていないが,駐車場でテント設営や塵類の廃棄はしない。乗鞍と上高地は,この近辺を代表する観光地だが,自家用車の乗り入れの有無,観光資源の保存姿勢が相当異なる。要は各自の自己責任の問題なのだろうが,素晴らしい自然を将来に伝えたいものだ。



 8月16日晴れ コース上高地→横尾→涸沢→穂高岳山荘

4:30起床,沢渡へ走りバスで上高地へ入る。明日縦走する予定の奥穂から西穂のスカイラインがもの凄い凹凸で,まるで挑発しているようだ。身支度を調えて6:00出発,昨夜の夕立のせいか小梨平のキャンプ場はシュラフなどを乾かす光景が見られる。横尾までの道は平坦で,梓川の清流と明神岳の山容が気持ちよく散策気分である。
徳沢で出すものを出して8:30横尾を通過,やっと山道らしくなる。左手に屏風岩が圧倒的な迫力で迫り,渓谷沿いに涸沢の名峰たちがチラチラと見え隠れする。横尾から涸沢へは最もポピュラーなコースだろうが,私は登りは初めてだがなるほど楽しみなコースではある。今日のような好天では,パノラマコースから涸沢に入りたかったが,徳沢で聞くところによるとパノラマコースは避けてもらっているとのことで,ソロの場合,ちょっとばかり二の足を踏んでしまったなぁ。
やがて,涸沢カールが現れると,カールを囲むオールキャストの出演だ。北穂,涸沢槍,涸沢岳,奥穂,吊り尾根,前穂,北尾根と一大パノラマの出迎えを受ける。やはり日本一の景観だぁ。
しかし,今日の宿泊地,穂高岳山荘はカールの上,ザイテングラードのずっと上に赤い屋根を見せて,「ここまでおいで」と言っている。景色と現実のギャップの大きさよ。あ~
涸沢ヒュッテで,軽食後10:40出発,パノラマコースからザイテングラードに取り付く。標高で2500メートルを越えると,心肺機能が急激に落ちるようで,亀歩きになるが前穂の北尾根の絶景などを励みに登る。北尾根の三四のコルに誰かが取り付いている。空にはヘリが2機飛んでいる。機体から運搬用ではないドーファンタイプの高速ヘリで,捜索しているのだろうか。因みにこの日は2名の犠牲者があったそうな。
13:00なんとか穂高岳山荘へ到着,まずビールを・・・涸沢のテンと場がカラフルな花が咲いたように見える。たくまろもおっとり刀でテントを張る。ガスのため,笠ヶ岳や常念岳はほとんど見えず,時折ジャンダルムが雄姿を見せる程度だ。
この時期は,テント泊がいい,小屋は満杯状態だ。今日の京都では五山の送り火で,大変な混雑だろう。一人テント内で大文字送り火に思いを寄せるのもいいもんだ。18:00過ぎに白出沢側に,アーベントロートに染まる奥穂を見ようと多くの人が集まるが,ガスって何も見えない。未だに見たことが無い。


 8月17日晴れ コース 穂高岳山荘→奥穂高岳→西穂高岳→西穂山荘→上高地

4:30起床,昨夜は風が強く小雨もあり,ご来仰は無理と思われたが,もう雲海の東が赤く染まり,手にとる場所に常念だけが黒く静かに佇んでいる。急いで朝食,立つ準備をする。5:00出発するが,奥穂への飛騨側巻き道で涸沢岳がモルゲンロートに染まり始めた。したがってご来仰は見えない! 教訓・山の天気は気まぐれ,山荘を1時間前に出発できる準備を怠らないこと。
稜線に出ると槍ケ岳が絶好の被写体として朝日を浴びているが,肝心なところでカメラが故障しており,今までの感動の写真が全部無くなる。またもう一つ難問がやって来た。いくら急いでいても朝のお勤めはしてくるべきだった。ピンチ!急遽ザックをデポして山荘まで取って返す。「間に合ったぁ。」
貴重な時間を浪費して,6:20奥穂に到着。飛騨側には孤立する白山の右手に笠ヶ岳,黒部五郎から雲の平へと続く,槍の後方には立山や鹿島槍の双似峰が霞んでいる。信州側には常念の後,雲海を隔てて八ケ岳,富士山,南アルプスの甲斐駒,北岳などが白雲に浮かんでいる。今から行く南側ジャンダルムの後には,西穂の縦走コース,焼岳,乗鞍,御岳と日本のそうそうたる山塊が一望される。夏山は朝が最高だ。
6:40奥穂を出発,早速ナイフリッジの通過ですくみ上がる。今日は風が無くてよかった~。この縦走路は,大キレットや涸沢槍付近の難所と岩質が全く異なり,山容全体が矩形に崩壊しており,まるで瓦を載せているような状態だ。多くの場所が,滑落すればまず助からない。三点確保と緊張が強いられる。でもジャンダルムの頂上は,閑静で最高のロケーションだ。
アップダウンの末,8:25天狗のコルで小休止。岳沢へのエスケープルートがあるというが,もの凄く急な下りだ。あまり利用したくない。
鎖場をほとんど直登して8:50天狗の頭へ到着。ほっとするのもつかの間で,間天のコルへの急降下だ。この難所で踏み跡が解らず,少しルートを外れるが,後続の方が稜線沿いに誘導してくれた。何とか難所の逆層スラブを下りコルに着く。今度はまた急な登りで間の岳。好天で笠や乗鞍,御岳,上高地が見えるのがせめてもの慰めか。
その後も何度もアップダウンを繰り返し,11:00西穂に到着,久しぶりの緑のピークだ。その後は足場も良くなりハイ松帯を西穂山荘へ12:40到着する。
小休止の後,上高地へ下山,15:10バスターミナルに着くが,沢渡付近で事故があったらしく1時間以上バス待ち,沢渡駐車場へは17:00にようやく到着した。
事故の状況から平湯へ出ることにした。平湯温泉「ひらゆの森」は男女合わせて13の露天風呂があり,リラックスするには良いけれど,洗い場が少なかったなあ。
なんやかんやで,今日は平湯バスターミナルで仮眠する。ヘッドランプで飲むビールは味がいまいちだぎゃあ。


 8月18日深夜1:00めが覚める。顔を洗って出発。高山からせせらぎ街道を抜け,郡上八幡に出る。ガソリンスタンドが開いていない。高速の関SEでやっとGASが入れられた。危なかったぁ。
その後は,ひたすら京都へ向け走る,寝る,走るでした。

    野宿と山歩き
たくまろの世界          野宿と山歩き